農地所有適格法人(旧農業生産法人)2017/9/6作製
農地所有適格法人とは、耕作(農業)を目的とした農地等の権利取得が認められる法人です。
この法人になるためには、農地法第2条に規定される一定の要件(法人の組織形態要件、事業要件、構成員要件、役員要件)を満たす必要があります。
なお、工場栽培、畜産、農地を利用しないで農業を営む、農地を借りて農業を営む法人は、必ずしも農地所有適格法人の要件を満たす必要はありません

農地所有適格法人の要件

農地所有適格法人となるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります
また、農地等の権利取得後も、要件を継続して満たす必要があります
法人形態
  1. 株式会社(非公開会社に限る)
  2. 農事組合法人
  3. 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)
事業要件
  1. 売上高の過半が農業(農産物加工・販売等の関連事業を含む)であること
構成員議決権要件
  1. 以下の農業関係者が総議決権の過半数を占めること
    ・農業の常時従事者
    ・農地の権利提供者
    ・基幹的な農作業を委託している者
    ・農地中間管理機構
    ・地方公共団体、JA、JA連合会
役員要件
  1. 役員の過半数が農業(販売・加工等含む)の常時従事者(原則年間150日以上)
  2. 役員又は重要な使用人(農場長等)のうち、1人以上が農作業に従事(原則年間60日以上)

農業委員会への報告義務

農地所有適格法人は、毎事業年度の終了後3ヶ月以内に、必要事項を記載した報告書を、農地等の所在地を管轄する農業委員会に提出する必要があり、毎年の報告をせず、または虚偽の申告をした場合には30万円以下の過料が課せられます
また、農業委員会が農地所有適格法人の要件を満たさなくなるおそれがあると認めた場合、法人に対し、必要な措置を講じるよう勧告されることがあります

法人化のメリット

農業経営を法人化した場合、下記のメリットが考えられます







経営管理能力の向上
  1. 経営責任に対する自覚を持つことで、経営者としての意識改革を促進
  2. 家計と経営の分離による、経営管理の徹底
対外信用力の向上
  1. 計数管理や各種法定義務(設立登記、経営報告等)を伴い、金融機関や取引先の信用力が向上
  2. 「企業」としてのイメージ向上により、商品取引や従業員の雇用等が円滑化
人材の確保・育成
  1. 労働環境の整備により従業員の待遇向上、雇用が円滑化
  2. 法人に就職することで初期負担なく経営能力、農業技術の習得が可能なことから、新規就農者の確保が容易
経営継承の円滑化
  1. 法人の役員、社員等の中から有能な者を後継者として確保することが可能
  2. 法人として経営・取引を行うことで、事業継承後も対外信用力が継続







税制面での優遇
  1. 所得の分配による事業主への課税軽減
  2. 定率課税の法人税の適用
  3. 役員報酬の給与所得化による節税
    ・役員報酬は法人税において損金算入が可能
    ・所得税において役員が受け取った報酬は給与所得控除の対象となる
  4. 使用人兼務役員賞与の損金算入
  5. 退職給与等の損金算入
  6. 欠損金の9年間繰越控除(青色申告法人に限る・個人は3年間)
  7. 農業経営基盤強化準備金の活用(青色申告法人で認定農業者に限る)
社会保障制度
  1. 社会保険、労働保険の適用による農業従事者の福利増進
  2. 労働時間等の就業規則の整備、給与制の導入による就業条件の明確化
制度資金
  1. 融資限度額の拡大(認定農業者に限る)
  2. 農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
農地の取得
  1. 農地中間管理機構が農用地等を現物出資することにより農地取得の負担軽減
以上のメリットを受け、経営基盤が確立されることで、経営の規模拡大、多角化が期待され、新規就農や雇用創出など、地域社会の活性化も期待されます
しかしながら、これらのメリットは、法人化することによって自動的に得られるのではなく、持続的な経営努力で獲得できるものですし、法人化することによって、農地等の相続税の納税猶予制度、生前一括贈与の特例を受けられなくなる場合もありますので、自らの経営内容、状況等を良く検討し、法人化することが重要です
法人化する場合、どのタイプの法人を選ぶのか、それぞれの法人形態の特色や自らの経営展望に照らして選択する必要があります
農業法人

農業法人の設立

設立手続の手順
農業法人を設立するには、まず初めにどのような法人形態にするのかを決める必要があります
家族経営を法人化する場合は株式会社の設立が一般的ですが、仲間と一緒に法人化を目指す場合や、集落営農を法人化する場合には会社法人の他、農事組合法人も選択肢に含まれます
既に農業を営んでいる方は、事前に家族や生産組織の構成員で話し合い、将来、どのような農業法人にしたいのかも含めた長期的な視点をもって、法人化の目的、状況に合わせて法人の形態を選択してください
法人設立の手続き自体は、会社法に基づき一般の法人と同様に行います。ただし、法人の設立後、農地所有適格法人として農業経営を行うために農地を取得するには、農地法第2条第3項に規定される上記の4つの要件を満たした上で、農地の取得申請を行う必要があります
また、農地所有適格法人の要件は、農地取得申請時だけではなく、農地の権利を取得した後も継続して満たしていなければなりません
設立した法人が上記の要件を満たしていない場合、将来的に要件を満たせなく恐れがある場合、法人は農地を所有することができず、会社を設立したものの予定していた事業計画が成り立たないということにもなり得ます
そのため、農地等の権利を取得する農地所有適格法人の設立をめざす場合には、定款や事業計画作成の時点で市町村農業委員会等の関係機関・団体へ事前に相談することをお勧めします